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東京地方裁判所 昭和42年(ワ)5472号 決定

原告 ヒルトン・インターナシヨナル・カンパニー 外二名

被告 東京急行電鉄株式会社 外一名

主文

原告らは共同して本決定送達の日から一週間以内に、金五〇〇万〇八〇〇円相当の印紙を訴状に追貼せよ。

理由

本件訴状によれば、原告らは、営業受託契約その他のこれを補足する契約(以下本件契約という)にもとづく、営業受託者であることの確認およびその受託業務の妨害予防を請求している。

そして、原告らは営業受託者たる地位によつて委託手数料の支払を受けるのであるから、本件訴によつて主張する経済的利益は委託手数料であり、本件訴額はこれをもつて定めなければならない。

原告、被告各代理人提出の上申書によれば、次の諸点が認められる。

(一)、原告ら主張のホテルの営業委託契約では、営業受託者の受領する委託手数料の算出方法として次のとおり定めていること。

(1)  ホテル開業後第一会計年度から第五会計年度までの間の委託の手数料は、(イ)ホテル営業の正味売上高(ただし、当事者間の合意によりシヨツプ・レンタル、電報サービスの手数料および切手類の販売手数料を除く)の五パーセント相当額、(ロ)各年度の営業差益(シヨツプ・レンタル、電報サービスの手数料および切手類の販売手数料を含むが、委託者が立替支弁した創業時の宣伝広告等の諸費用を控除する)が、(イ)によつて算出した委託手数料に約五億九四〇〇万円を加えた額を超えた場合に、その超えた額の二分の一相当額(特別手数料、いわゆるボーナス)の合算額。

(2)  第六会計年度以降の委託手数料は、営業差益の三分の一に相当する金額。ただし営業差益の三分の二に相当する金額が約六億三〇〇〇万円に満たない場合には、右金額との差額に相当する金額を控除して得た金額。

(二)、昭和三八年度から、昭和四二年五月(本訴提起の月)分までの委託手数料として、営業受託者に支払われた金額は次のとおりであること。

(1)  昭和三八年度 三一四五万四六四三円

(2)  昭和三九年度 八二〇六万五〇一〇円

(3)  昭和四〇年度 八一〇二万二六六七円

(4)  昭和四一年度 一億六〇四五万九二三三円

(5)  昭和四二年度のうち五月分まで 九三四八万三八七四円

以上の推移をみれば、右ホテルの営業受託者が受領すべき委託手数料、したがって、これが算定の基礎となる右ホテルの営業収益は、昭和四〇年度においてやや伸び悩んだもののその後は順調に増加していく傾向にあることが認められる。また、原告らが本訴を提起した昭和四二年五月二九日当時、右の傾向を予測することは充分可能であつたといわなければならない。

(三)、昭和四二年度のうち六月以降分および、昭和四三年度のうち六月分までの各委託手数料として支払われた金額は次のとおりであること。

(1)  昭和四二年度のうち六月以降分 八一〇三万六七九二円

(2)  昭和四三年度のうち六月分まで 一億七四九四万七九八二円

(四)、なお、昭和四三年度の右ホテル営業計画上、右(一)の算出方法にしたがつて営業受託者に対して支払わるべき同年度の委託手数料として、三億三四七八万七九七九円が計上されており、これを基礎とすれば、昭和四四年度以降、本件契約が終了する昭和五七年(一九八二年)までの一四年間に、営業受託者に対して支払わるべき委託手数料は、合計四六億八七〇三万一七〇六円と見込まれること。

右(三)の(1) 、および(四)記載各金額合計は、五一億〇二八五万六四七七円となり、営業成績の推移からして本件訴提起当時少くとも合計金五〇億円の手数料収入が見込まれたとみるべく、本件訴訟の目的の価額は営業収益の変動を考慮し、さらに中間利息相当額を控除してその五分の一である金一〇億円を下廻るものではないと認められる。また、被告らが業務の妨害をした場合一日につき金九〇五万七六七六円の支払を求めていることに照しても右認定が相当であると認めるのほかはない。

したがつて、民事訴訟用印紙法第二条により計算した訴額金一〇億円に対する印紙額五〇〇万一三〇〇円より、既に貼用されている五〇〇円を控除した金五〇〇万〇八〇〇円相当の印紙を原告らは共同して追貼すべきものであるから、主文のとおり決定する。

(裁判官 渡辺一雄 菅原敏彦 池田真一)

【参考】(右事件の終局判決)

(東京地方昭四二年(ワ)第五四七二号 昭四三、一一、二九判決)

主文

本件訴を却下する。

訴訟費用は原告らの負担とする。

事実

(原告らの求める裁判、原告らの請求原因)

別添訴状写請求の趣旨、請求の原因に記載のとおりである。

理由

一、職権をもつて調査するに、本件訴訟の訴額は、金一〇億円を相当と認める。その理由は別添決定写理由に記載のとおりである。

二、当裁判所は、原告らに不足額相当の印紙の追貼を命じたが、原告らはこれに応じないので、原告らの訴を却下することとし、訴訟費用の負担につき、民事訴訟法第八九条、第九三条により、原告らの負担とし、主文のとおり判決する。

(裁判官 渡辺一雄 菅原敏彦 池田真一)

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